第4章 旅立ち
「二人とも話はそこまででとりあえず座ったらどう?ちょうど夕飯が出来上がったところなの。」
チャンヒは木椀に料理を盛り付けたものを机に並べる。
「今日はハヨンの好きなものを作ったの。たくさん食べなさいよ。」
3人は手を合わせてから食事を始める。
「城にはいつから行かなければならないの?」
「4日後だね。入隊式は一週間後なんだけど、向こうの寮の片付けとかしなきゃならないし。」
家からの距離も考えるとどうしても住み込みで勤めることになり、そうすればおのずと荷物も多くなる。きっと入隊直後は疲れきって荷物の整理もままならないだろう。だとすれば忙しくなる前に片付けた方が楽に決まっている。
「しかしまぁ、年月っていうのは早いものだな。この間までまだほんのガキだった癖に、もう娘になって、兵士になるんだからなぁ。」
「ヨウさん、おじいさんにでもなったんですか?」
珍しくしみじみとしているヨウにハヨンはからかい半分で返事をする。
「いや、お前はもう、俺の娘同然だからな。子供が旅立つ時はこんなものかと思っていたところだ。」
ヨウは燐にも故郷にも妻子はいない。どうやら数少ない弟子達を代わりに自分の娘、息子のように思っていたようだ。
「そうですね。時が過ぎるのは早いものです。ハヨンが剣士になりたいと言った頃からあっと言う間だったように感じます。あの頃はこんなに小さくてヒョロヒョロだったのに」
とチャンヒは手でハヨンが小さい頃の背丈を表す。
「今じゃ女の人にしてはずいぶんと背が高いものね。それにたくましいし。何か運んで貰うときは、村の男の人よりハヨンに頼った方がいいくらいよ。」
以前チャンヒに頼まれて村の男が荷物を運ぼうとしたが重すぎて諦めかけたことがある。しかし、ハヨンが運べるといいはり、村の連中が疑い半分で任せたところ、無事目的の場所まで運んだのだ。