第22章 共に結びし物
「さて、そろそろ訓練場に行くか。」
「そうだな。随分と話し込んでいたようだし…」
リョンヘはヨンホの言葉を聞き、部屋のすみに置いてある香時計(昔の時計)に視線を向ける。香時計は来たときよりも大分香の灰ができていた。話している途中で鐘の音が聞こえたので一時間以上は話しているだろう。
三人はそのまま訓練場に向かう。
「今日は訓練はしていないのか?随分と静かだが…」
「今日は午前に練習したのでしょう。この国は徴兵制で家庭を持つ兵も多い。ずっと訓練や警備をさせるわけにはいかないのだ。例外で護衛者は志願者から選ばれた屈強な独身の男と決まっていますが」
「徴兵制か…。逃げ出す民はいないのか?」
「この国は戦いがあるからこそ成り立っている国だ。それをわかっているから逃げるものはいない。私も決して皆を危険な目に会わせたい訳ではないのだがな…」
静まり返った訓練場は少し君が悪かった。前に見た熱気や人々が無いからだろう。
二人は正装を着たままだったので動きにくい上着等を脱いで畳んだあと床に置いた。刀は正式な場では飾り刀のみの帯刀が許されているので手合わせに使うわけにもいかない。場内におかれている木刀を二本拝借して手合わせは始まった
静かな訓練場に二人の木刀が激しくぶつかる音だけが聞こえてくる。風一つ吹かずどこか閉鎖された空間で行われているような奇妙な感覚にハヨンはおちいった。
どちらも腕前は確かなので、ハヨンは固唾を呑んで見守るのだった。