第22章 共に結びし物
同盟の締結は厳かに行われた。皆が静かに見守るなか、滓の王が署名し、その後にリョンへが署名した。
あとはその署名の写しを書記官が書き取り、正式な印を押してリョンへが受けとる。この書は本国の国王が手にした時からこの同盟は施行される。それまでは仮のものだ。
リョンへは写しを丁寧に箱に入れる。
そこまでの動作を終えてみなはほっと息をついた。
その後は大きな仕事を終えた達成感かみな少し表情が明るかった。仕事が本当に終わるのは城に戻ったときなのだが、やはり山を越えた気にはなるらしい。
昼食をリョンへとハヨン、その他数人の従者と、滓の王とヨンホその他数名ととる予定だったのでハヨンはまだまだ達成した気持ちにはなれなかった。
滓の王は、ヨンホを授かったときすでに三十路を過ぎていたらしく、顔には深いしわが刻まれている。しかしその皺はけっして彼を老いたように感じさせるものではなく、むしろ威厳のある物静かな雰囲気があった
実際王は口数が少なかったが、確信をつくものばかりで鋭い瞳で何事でも見通しているような感覚におそわれた。
「リョンへ殿は武道に通じていらっしゃるそうですな」
「はい、多少は」
ハヨンは王に話しかけられたリョンへがどのように答えるのか気になってじっと話に耳をかたむける。
滓の王は笑った。
「多少ではなかろう。お主は戦でも王族の中で最も最前線を担う者だと聞いている。それほど信頼されておるのだろう。」
王子でも落ちこぼれだから、という噂も燐の宮中では飛び交っているが、第一の理由はそれに間違いないとハヨンも思っている
一度共に戦ったときはこれほど頼もしい相手はいないと思えたのだ。