第22章 共に結びし物
ついに同盟を結ぶ日となった。ハヨンは自室で隊服に袖を通す。この同盟を結んだら明日には帰郷の途につく。そのとき自分の故郷はどうなっているのか。最近、人々の怪しい動きが多いので不安がわき起こる。
(もしかすると、自分が知らないうちに何か小さな動きがあったかもしれない。)
城からの早馬や伝令では伝えきれないような、たとえ小さなことでもリョンヤンやリョンへの身にふりかかる災いがないかハヨンには曽野ことばかり案ぜられる
父の形見である刀を携え、隣のリョンへの部屋の戸を叩く。
「リョンへ様。お迎えにあがりました。」
「ああ、入ってくれ。」
ハヨンが部屋に入ると、もうリョンへは支度を終えていた。
「では私達はこれで…」
この城の侍女達は部屋からそっと出ていく。
「今日が正念場だな」
「はい」
朝日に照らされたリョンへの表情はとても柔らかに見える。
「明日にはここを発つが、城に戻ったらまた状況が変わっているかもしれん。それに私達は城を離れていたから完全においてけぼりをくらう。…もし何かあったらリョンヤンを頼んだぞ」
「当たり前でございます。なにしろ私はリョンヤン様の専属護衛なのですから」
(なんでこういうところだけ似ているんだろう…)
ハヨンは相手を思いやりすぎる二人に嬉しくも感じたが一方で苛立ちを覚える。二人には自分の身のことが念頭にないのだ。
「お、そろそろ時間のようだな。では行くか。」
滓の城を案内する者がやって来たので話は閉ざされたのたった。