第21章 城を離れて向かうのは
「それにやっぱりみんなは王子に雑務をさせるなんて…って思ってるしね。でもやりたいんだったらもっとその事を伝えればいいと思うよ。」
ハヨンも主であるリョンヤンが突如ハヨンを手伝いたいと言ってきたら戸惑ってしまう。その上今回は普段リョンへと関わりの少ない家臣や兵士たちが多い。だからリョンへの申し出を畏れ多く感じるのだろう
リョンへは何事にも取りくみたい質だが、逆にリョンヤンは相手を困らせてしまうのでは、とあえて一歩ひいておくようだ。こういったところで違いが出てくるのはなぜなのか、ハヨンは少し疑問だった。
「お、そろそろ昼餉ができるかも知れないな」
ふりかえると、ハヨン達一行が休憩所としている辺りからいくつか煙があがっている。どうやら食事を用意しているようだ。
馬で駆けて随分と時間が経っていたので、リョンの予想もあながち間違いではないだろう。
「そうだね。そろそろ戻ろうか」
二人はもと来た道を引き返し始める。
「今まで町ばっかり出向いていたけど、こういうところもいいな。また馬に乗って行きたいな。」
「一人で?」
「いや。リョンヤンともまた来てみたいな。リョンヤンはだいたい城の近くにある馬術場でしか乗らないし、こういうの喜びそうだから。」
そう言えばリョンヤンは体が弱いからか運動するということに憧れを抱いているし、実際武道でも体力の消耗の少ないものはいくつか嗜んでいるようだった。
(そう言えばリョンヤン様とは執務室ばかりこもっていたな…。またあの方の馬に乗るお姿を拝見したいなぁ。)
ハヨンは城に帰った後、必ずリョンヤンに尋ねてみようと心に決めた。