第21章 城を離れて向かうのは
隣国とはいえ、滓への道のりは長かった。4日かけてやっとのことで国境にたどり着いた一行は少しうんざりしていた。何しろ今まで緩い坂道をひたすら歩いてきたのだ。
(きつい坂道を少しのあいだ登るよりも、緩い坂を長い間歩いた方が、体にじわじわ疲れがくるな)
とハヨンは考えたが、口に出せば皆一斉に気づかないふりをしている疲労を感じてしまうような気がしたので黙っていた。
少し歩くと滓の兵士と従者が何人かハヨン一行の到着のために待機していたようだ。今回の旅の指揮をとっていたものが挨拶をする。
案内されて町の中を歩き始めると、燐とは全く異なった町の風景が目新しく見える。
燐の国よりも圧倒的に鍛冶屋も武器商人も多い。その上体格のよい男がちらほらと見え、庶民も揃って鍛えられた体を持っているのが、この国の繁栄と統率力の強さを物語っていた。
(燐の国は…。今は栄養の不足した民で溢れているしこんなに活気もない。もしかしたらそれをみたヨンホ様はリョンヤン様にどうしても燐の国を変えてほしいと思って反逆者についてお話になったのかも…)
それが同盟国を強くするためか、それとも飢えた町の人びとを哀れみ、この国を変えたいと思っている者がいることを伝えたのか。本人でなければ腹の底はわからないが、ヨンホは好意的な王子なのだろう。下手をすれば燐の国の弱点をついて属国にすることも不可能ではないのだから。
獣を操ると言っても限度があるし、疲弊しきった民を戦に駆り出しても勝てるみこみは無い。ハヨンは他国を初めて目の当たりにして、自分の国が思った以上に過酷なことを目の当たりにした