第21章 城を離れて向かうのは
「ずっと座り続けるのも辛いしね…」
「俺もヨンホ王子みたいに馬で行きたかったんだけどなー。何しろ同盟を結ぶ公式的な訪問だからな。」
和議や同盟を結ぶおりは正装して輿に乗るのが礼儀となっている。ヨンホの訪問はあくまでも2国間の仲を深めるというのが名目だったので、ヨンホは馬で訪問しても問題はないのだ。
「リョンはやっぱり自由を愛してるんだね。」
形式ばったものをあまり好まない姿は彼らしくてハヨンは好きだ。
「そうだなぁ…。でも王子の仕事も大事だともちろん思ってる。それにしても他のみんなとどうにか打ち解けられないものだろうか。」
「え?」
「さっきも料理を手伝おうと思ったら断られたし。俺だって町のみんなに教えてもらったから簡単なやつはできるんだけどなあ。」
そうぼやくリョンは口を少し尖らせていてなんだか子供っぽい。ハヨンにはそんな姿がかわいいとさえ思えてしまった。
「それは…。リョンの態度が堅いからだと思うよ。」
「堅い⁉俺が?」
どうやら本人は自覚していなかったようだ。ハヨンは彼の驚きようが面白くて肩を揺らす。馬も彼女の笑い声に反応してぴくりと耳を動かした。
「うん。気づいてなかった?リョンへ様とかは何とかですねぇ。ってにこにこ笑ってらっしゃることが多いけど、リョンはもう何とかであった。ってしかめつらして言ってるもの。いつも町のみんなに話しかけてる表情で話しかければもっと雰囲気変わると思うよ」
「そうかそうか…。俺、王子の仕事をしてるときはどうしても威厳を威厳をって考えちゃうんだよな。何か頼りがいのある人物って考えながら喋ってるんだけど、逆効果だったかぁ。」
ハヨンはリョンの意外な一面を知って、なんだか笑いが止まらなくなってしまった。