第21章 城を離れて向かうのは
そして出立の日。リョンヘ一行は城の大勢の者に見送られながら城を出た。この国のためにもとても重要な使いのため、町を通るときも、人々は額を地面につける最敬礼で一行を見送る。
ハヨンはこの感覚に慣れなかった。馬に乗り、人々を見下ろしながら闊歩することに、なぜか腹に冷え冷えとする感覚を覚えた。これはハヨンに向けての敬意ではないが、人を従えると言うのは、こんなに奇妙な感覚を持つのだろうか。
ハヨンはリョンヘの乗る輿の真横にいるのだが、御簾で顔が隠れているリョンヘは、いったいどのような表情をしているのか全くわからなかった。
(人を従える頂点に立つ者は、想像できないほど複雑な感情を持っているんだろうなぁ。)
権力に酔いしれる者、人々からの視線や妬みに怯えるもの、そういったものはなってみないとわからないことだろう。
ハヨンは気味の悪い感覚にじっと耐え、人通りが少ない荒野に出た辺りで少しほっとした。
「ここで休息をとる!皆のもの次の移動までしっかり休め!」
と今回の移動での指揮官がそう指示をし、皆昼餉の用意を始めた。
「…リョンヘ様。あなた様もお疲れでしょう。しっかりお休みをお取りください。」
ハヨンは御簾越しにリョンヘに声をかける。
「そうだな。私もずっと座っていて、いささか疲れた。」
そう言って自ら御簾を上げて出ようとする。
「殿下!そのような…私たちがしますゆえ、」
「よいよい。昼餉の用意はどこでしている。私も手伝うぞ。」
そして御簾を出た後は、手伝おうとすると皆に駄目だと反対されてリョンヘは馬で辺りを散策することになった。
「あぁー。やっと足を伸ばせる。輿は窮屈だからなぁ」
同行したハヨンはそのリョンヘの態度の落差に思わず苦笑したのだった。