第21章 城を離れて向かうのは
とうとう明日が出立の日となった今日。ハヨンはいつものようにリョンヤンの護衛をしていた。
「明日には出立ですね。ハヨンがいなくなると
きっと寂しくなるでしょう。」
「何を仰るのですか、リョンヤン様。」
ハヨンはそんなことを言われるとたまらなく恥ずかしい気持ちになった。どうも彼女は真っ直ぐに愛情を伝えられると照れてしまう質のようだ。
ハヨンは少し顔をそらす。そんな彼女の様子を見て、リョンヤンはくすくすと笑った。
「照れてるんですか?」
「…言われ慣れてないもので。」
ハヨンは一度も恋をしたこともないので、恋仲になった男もいない。それだからか家族以外の人にそう言う言葉を言われるのはかなり珍しいのだ。
ハヨンがようやく顔を元に戻した時、リョンヤンの表情はなんだか苦しそうだった
「どうかされましたか?」
「ハヨン…。何があるとは私もわからないのですが、何か城内で不穏な動きが活発になっているようです。もしかするとあなたがここに戻ってきたとき、何かあるかもしれない。」
ハヨンはこんなに歯切れ悪く語るリョンヤンを初めて見た。眉間に皺をよせ、視線はどことなく下を向いている。
「どうか、どうか無事に戻ってきてください。ハヨンもリョンヘも私の大事な人ですから…」
リョンヤンはハヨンの両手を手にとり、懇願するような目でハヨンを見つめた。
「私もリョンヘ様も必ず怪我一つせずに戻ると誓います。リョンヤン様もどうかおきをつけください。」
例えようもない不安がハヨンに襲ってきたが、必ずリョンヤンの願いを叶えようと心に決めた。
(リョンヤン様の命とならば…。いや、私にとって大事な人の願いだから…)
どうか無事に帰ってこれるよう、ハヨンは天に祈るのだった。