第21章 城を離れて向かうのは
リョンヘが使者として滓を訪問する話はちゃくちゃくと進んでいった。ハヨンの役回りも多く、最近は護衛よりも専らリョンヘの護衛についての会議に参加してばかりだ
「まさかあんたと一緒に仕事する日が来るなんてなぁ。」
忙しい癖にそんなところをちっとも感じさせない様子で中庭にやって来るリョンの体力に、ハヨンは尊敬するというよりも呆れてしまう。
「忙しい時期なのに朝、こんなことしてて大丈夫なの?」
「大丈夫。俺は要領がいいからね」
なんて言っているがきっと兄弟どちらもが自分のやりたいことを全部やりとげようとする性格だから無理をおしてでもしているんだとハヨンはうすうす気づいていた。
「それにしても俺の滓への訪問とは違うことでこそこそと動いている奴がいるみたいなんだが、何か知らないか?」
ハヨンはその言葉にどきりとした。
「うーん、なんだろうね。私だとまだまだ下っぱだし、リョンヤン様に聞けばいいんじゃない?あの人、お城のことは詳しいでしょ?」
「それもそうだな。」
ハヨンはあくまでもリョンヤンの部下。いくら彼を信頼していても、どこまで話して良いのかわからないので、とりあえず本人に聞けばと促すことにする。あっさりとリョンも承知したのでほっとした。
「ハヨン、あんたは最近言い寄ってくる変な奴はいないか?」
あの貴族との一件以来、リョンはまめにハヨンの身について心配してくれる。ハヨンはその誰にでもどこまでも優しい心に本当に心から尊敬した。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
ハヨンは精一杯の笑顔でリョンを安心させようと、いつも以上に口角を上げて見せるのだった。