第20章 幸となるか不幸となるか
「この国はよいですな。自然が豊かだ。」
ヨンホは宴の折、外を眺めながらそう呟いた。燐の国は獣を操る国。しかしそれと共に力を貸している獣達に敬意を払い、自然豊かな国でもある。
城にも至る所に木が根をおろし、庭は四季折々の花を咲かせる。そこには池もあり、鳥等が羽を休める姿は日常となっていた。
「ありがとうございます」
リョンヤンはそう笑いながら侍女達に酒を注ぐように目で指示をした。ヨンホは相当な豪酒のようで、みるみるうちに杯の酒を飲み干してゆく。
対照的にリョンヤンは一口ほどしか口にしていなかったので、やはりここにも違いが現れるのだな、とハヨンは何となく面白かった。
宴にはリョンヘも参加しており、黙って食事をしていた。どうやら城でのリョンヘの姿は、寡黙で厳格な王子とされているらしい。最近それを知ったハヨンは、心の底では彼を心配していた。
リョンの時とはかけ離れた表情で、陰で獣を操れない王子、出来損ないの王子、と言われながらも、貴族に対抗しながら平民派の先陣をきっている。彼の心は休まっているのだろうか。
時折話しかけられて無難に答えているリョンヘを見て、だんだんとその不安が募ってゆく。
(何だか二人が壊れてしまわないか恐い。)
そんな脆くもないはずの二人に心配してしまうのはやはり主人として、友達として慕っているからか。
これから大きく国の様子が動いていくことがわかった以上、二人とも何とかして守りたいのだった。