第20章 幸となるか不幸となるか
「ではそろそろ出発いたします。短い間でしたが、お世話になりました。」
ヨンホ一行が城を出る日となった。数日の間に、リョンヤンとヨンホはまったく性格が違っていたものの、政策や戦術の考え方では一致したらしく、かなり親しくなっていた。
「また、戦術について語ろうではないか、リョンヤン王子。」
「そうですね。まだまだ話足りなかったですし、次の機会の時を楽しみにしてます」
二人が随分と親しげに話すようになったので、ハヨンは何だか微笑ましく思えてくる。
(なんでだろう、こんなふうに思うの失礼かな。いや、でも見た目も全然違う二人がこうやって楽しそうにお話しなさっているのって意外だし、嬉しいと言うか…)
ハヨンはなぜだか二人に申し訳なさを感じて、心の中で言い訳をしていた。
「では、失礼いたします。」
そうして共に見送りに来ていた王にも一礼して、一行は去って行ったのだった。
ヨンホ達の後ろ姿が完全に見えなくなった後、思わずふうっと息をもらす従者が何人かいた。どうやら始終緊張していたので、疲れたらしい。
みなその後はそれぞれの持ち場に戻ってゆく。ハヨンもこれからの予定を聞いていなかったので、ヘウォンを訪ねようと思っていたら、リョンヤンに呼び止められた。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、初めての大役お疲れ様でした。ヘウォン殿には伝えてあるので、今日はもうゆっくり休んでください。」
「ありがとうございます」
ハヨンもリョンヤンに労いの言葉をかけられてやっと仕事が終わったことを実感する。そのせいか何やらいつもより肩が重く感じた。
「またあなたに頼みたいことがあるんですが、明日の朝、隊の朝礼が終わったらすぐに私のもとに来てはくれませんか」
「はい、承知しました。」
そうしてハヨンは寮に足を向ける。
(今日までのそしてこれからの行動が幸となるか不幸となるかわからないけど、私はリョンヤン様の護衛者として、リョンの友達として精一杯あがこう。)
ハヨンはヨンホから入った知らせを思い返しながらそう心に決めた。
高く昇った日は、ハヨンを力強く照らしているのだった。