第20章 幸となるか不幸となるか
「随分とややこしいことになりましたね…」
リョンヤンはこめかみを手で押さえながらそう彼らが去ったあとに呟いた。
国と国同士の緊張が高まる中、さらに内側でも不穏な動きがあるのだから、対処するにも時間も手間もかかるだろう。
「私もまさかこんなことが起こっているなんて思ってもみませんでした。」
ハヨンは少しだけ緊張をときながらそう答える。ヨンホの護衛者の目付きは、やはり長い間戦ってきた戦士の目をしていて、彼の纏っている空気はあまりにも重かった。ハヨンとしては同じ職に就く者としてやはり一緒の空間にいるのは緊張したのだ。
(黙っているだけでもあんなに迫力があるなんて…。自分もいつかはそうなれるかな。)
戦わずして相手を怯ませる。そんな力をハヨンは羨ましく思う。
「同盟を結ぶ時は多分こちらから向こうへ出向かねばならないでしょう。私は行けないから、リョンヘが父上の使者として出向くでしょうね。」
リョンヤンはやはり体が弱いので、あまり外を出歩くことがない。もし仮に外出先で体調をくずしては危険だからだ。
本人には決して言えないが、ハヨンには彼は鳥かごの鳥のように見えることがある。ハヨンがこの城に来てから彼が城の外に出るのを見たことが無いのだ。
息苦しくはありませんか。
王子なのだから息苦しい生活を送るのは当たり前なのかもしれない。でもハヨンはそう馬鹿げた質問を投げかけたくなるときがある。
リョンヘのあまりにも自由で、型にはまらない生き方をしているのを近くで見ているせいもあるだろう。