第20章 幸となるか不幸となるか
「すみません。なにしろ二人きりでのお話となると、狭い部屋に為ってしまって…。」
リョンヤンはそういいながら客人用の椅子に腰かけるように促す。
「いや、私としてもこちらの方が話しやすいのでありがたいです」
とヨンホも会釈しながら腰かけた。ヨンホの護衛者は一歩下がったところで、そのまま立っている。やはり抜け目の無い様子だ。
ハヨンもならってリョンヤンの一歩後ろに立つ。
「単刀直入に言います。できるだけ早いうちに私の国と同盟を結んではいただけないだろうか。」
ヨンホの言葉があまりにも予想外だったので、ハヨンは思わず間抜け面になりそうだったが、ぐっとこらえた。
なぜならハヨンの国、燐こそ武器が足らず、隣国の睦の動きに警戒しており、ヨンホの国、滓と同盟を結びたいという意向を以前から匂わせていた。
だから武器も豊富で武力でもここ一帯では随一を誇る滓にこう頼まれるのは思ってもいなかったのだ。
「それはもちろん、喜んでお受けいたしますが、なぜそのような経緯に?」
「最近どうも睦の動きが思った以上に不穏なのです。どうやら我々の国の商人との裏の取引で繋がっているような節があり、武器の調達が今までになく多いようなのです。もちろん商人は突き詰め次第とらえますが、こう言ってはなんですが、やはり睦の国にはない特殊な力が欲しいのです。」
それはきっと、獣を操る燐独特の戦いかたを言っているのだろう。
「その上、我々の国ではまだ女人が勤めるということは普通のことではない。そのような柔軟な考えをもつ燐の国を参考にしたいのです。」
まだ女人の兵士はハヨンだけだが、ヘウォンもこれからはもっと女人が活躍できる場を考えようと言っていたのを思い出す。まだまだ燐も駆け出しなのだが、それでもヨンホに魅力的だと思ってもらえたのなら良いことだ。
ハヨンは自分が大いに役に立っていることを嬉しく思えた。