第20章 幸となるか不幸となるか
「まぁ、刀だけで専属の護衛は務まらんな。ならばここからは素手のみで戦おうではないか」
ヨンホは昔から伝わる古武術の構えをとった。
「どこからでもかかってこい」
そうヨンホに声をかけられ、ハヨンは勢いよく顎に向かって足を蹴りあげた。
「うわぁ…」
部下がそう言ってため息をついたのは、ハヨンが迷いもなく王子の急所を狙ったからだ。
「大丈夫ですよ、いつもより勢いがないので加減しているのでしょう。それにほら、はったりだったようですし」
そのあとハヨンは足をずらして肩にあて、ヨンホを少しよろめかせた。
そもそも攻撃がハヨンの真骨頂ではない。守りが主な戦い方だから、ハヨンの攻撃はやはり普通より威力が劣る。
そして、次はヨンホが拳を交互に出してハヨンを反撃したが、ハヨンは腕で受け止めて少し後ずさった。
ハヨンとの距離ができたので、ヨンホが走りながらハヨンに拳を振り上げたが、ハヨンは彼を背中を下にして投げた。
みなの歓声があがったが、ヨンホはすぐさま背中で受け身をとって立ち上がる。
次にそこにすかさずハヨンが飛び蹴りをくらわせようとしたが、足をつかんで投げられた。
はっと皆は息を呑んだが、彼女は宙返りして地面に着地する。
なかなか結果は決まらない。
「面白い武術を使うな」
ヨンホがハヨンにそう話しかける。
「はい、教えてくださった方が異国の方でして…」
ハヨンは肩で息をしながらそう答えて笑った。