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華の剣士 王宮篇

第20章 幸となるか不幸となるか


ハイルが戸を開けてまず目に飛び込んだのは、ハヨンがヨンホに向かって剣を振り下ろす光景だ。


ヨンホは意図も簡単にハヨンの剣を捉える。そしてハヨンは重心を乗せても無駄だと悟ったようで、すぐさま後ろに下がる。


しかし次の行動はいつものハヨンにはあり得ない動きなので、ハイルは思わず大きな声を出しそうになった。


もう一度ハヨンはヨンホに同じように剣を振り下ろしたのだ。


「なんだか、いつものハヨンと違いますね。」


それには一緒にやって来た部下も気がついたようで、ハイルにそう囁く。


「あなたもそう思いますか。」


「はい。彼女は無理だと思った手はもう二度と使いません。できるだけ体力の消耗が少なくすむよう、すぐに判断するんです。それに、あんな上段から剣を振り下ろすなんて無防備な攻撃、あんなに何度もしない質です」


上段で剣を構えるとどうしても腹の辺りが、がら空きになる。腹には重要な臓器がいくつも収納されている上に、ろっ骨で覆われていないので、一撃を受けるとかなりの負担を負うことになる。


急所もたくさんあるので、辺りどころが悪ければ死に繋がるのだ。それを何度も教えられているはずだし、彼女は入隊したときにはすでにその事を心得ていた。そんな基本的なことを守らず戦うとは一体どういうことなのか。


ハイルと部下は先行きが見えないことに不安を覚えるのだった。


「それにしてもヨンホ様は一向に動こうとなさらないですね」


大きな岩のようにその場に構えているヨンホは、まだハヨンの剣を受け止める動作以外ほとんど動いていない。


そうこうするうちにハヨンは再び剣を振り下ろし、見切りをつけてから後ろに下がる。


なんともじれったい展開だ。


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