第20章 幸となるか不幸となるか
「ハイル様っ…!」
「どうしたんですか、そんなに慌てて。」
今日のヨンホの訪問の変更のために護衛の配置を白虎の会議室で一人、いろいろと考え直していたハイルは騒々しく入ってきた後輩の兵士の登場に、顔をあげる。
「さ、先程ヨンホ様が武道場にお越しになられたのですが、ハヨンとお手合わせなさるとおっしゃって…。ただいま二人で試合をなさっております」
思わず音を立てるほどの勢いでハイルは腰掛けから立ち上がった。
「それはまさかハヨンから言い出したんじゃないでしょうね?」
彼女は聡明ながらも何か戦うことにおいては人よりも挑発的で、向う見ずな面があるので、ハイルはもしそうだったらどうやってヨンホに謝罪しようと反射的に頭の中で考えた。
「いいえ、ヨンホ様のご意向らしく、ハヨンはただその誘いに乗っただけのようです」
「…とりあえずハヨンの様子を見に行きます。教えてくれてありがとう。」
ハイルは会議室を出て二人で小走りに進む。
「ところで俺に伝えたということは、ヘウォンはもちろん…」
「はい、ご存じです」
「彼は何と?」
「前代未聞だが、楽しそうだ。非番の奴は観に行かねば損だ!と」
ハイルは相変わらず陽気で楽観的な様子を聞いてため息をついた。こうやって彼の心労は増えてゆくのである。
「ハヨンが何かしでかさないといいんですが…」
祈るようにハイルは武道場の戸を開けたのだった。