第20章 幸となるか不幸となるか
「構うな。私はこの者に個人的に興味を抱いただけだ。女の兵士など初めて見たからな。それに武道をやっておる者は言わずとも身のこなしといい人とは違うところが出てくる。先程まで本当に戦っているのか悩んでいたのだが、やはり私の目に狂いはなかったようだな。」
そう言いながらヨンホは衣を戦いやすいように縛り始める。
「とはいえ私とお前では力の差が出てくる。俺は木刀にするがお前はどうする。真剣でもよいぞ。」
これはハヨンが女性だと思い気遣っているからの優しさか、もしくはこんな気遣いをしなければろくに戦えないだろうという嘲りか。
思わずどちらかと頭で考えたハヨンは随分曲がった考えをするようになったと叱咤する。
(もっと素直にならなきゃこの先やっていけない。)
しかしそれについての反省は後にすることにして、ハヨンはその申し出を断ることにする。
「いいえ、私も木刀でいたします。」
「…そうか。お前も普通の奴とは違っているな。」
ヨンホは少し楽しそうだ。
練習していた兵士達は一斉に脇にひき、ハヨンとヨンホだけが武道場の真ん中に立つ。
ハヨンはどうやって戦うべきか考えあぐねていた。何しろ彼の情報は一切無いのだ。
「では構えて。」
ハヨンは珍しく考えて戦うことを放棄することにする。どちみち本番でも敵の情報は無いのだから
「始めっ!」
ハヨンはその掛け声と共に木刀を前に突き出した。