第20章 幸となるか不幸となるか
「皆鍛練を怠っていないのだな。無駄の無い動きだ。」
ヨンホは皆の動きを鋭い目付きで見ている。それはまるでヨウがハヨンに指導をしているときとそっくりで、本当に彼は武道を愛しているのだとわかった。
「はい。もちろんですが毎日練習をしております。しかしあまりにも体に負担をかけると疲労や怪我に繋がりますので、きちんと休養日もとっております」
「そなたはそういった管理をしておられるのか」
とハヨンにその鋭い目を向ける。やはり王の血を継ぐもの独特の威厳があり、たじろぎそうになった。
「いいえ。私は一人の兵士として勤めております。リョンヤン様の専属護衛の一人でもあります。」
その返答でハヨンは彼がこんなにも驚く表情を見せるとは思わなかった。
「白虎か…。なるほどな。よし、この国の兵士の腕前を自分で感じたいと思っていたところだ。俺と手合わせをしないか?」
「はい。喜んで。」
その場にいた従者達はあわてふためく。
「な、何をおっしゃるのです、ヨンホ様!そのような女人でなくとも腕の立つ兵士ならいくらでもございましょう!」
とヨンホの従者は女を相手にする必要は無い、なにをしているのだとでも言うようにたしなめているし、
「いいのですか、ハヨン。これであなたが負けてしまえばこの国の兵士の力はあなたを基準にされるのですよ?」
とリョンヤンの後に静かに座っていた従者はこっそりハヨンに話しかけてくる。
何しろヨンホは軍事大国の王子なのだから。