第20章 幸となるか不幸となるか
「今日は気を引き締めていきましょう。」
滓の第二王子の訪問の日、リョンヤンとハヨンを含めた専属護衛の3人がリョンヤンの執務室に集まっていた。
「ハヨン、今回は頼みましたよ」
「はい。」
ハヨンは特別に接待の一人としてリョンヤンに付き従うこととなっている。あまりにも重要な役目で、今朝目が覚めてから尋常になく速い鼓動をどう鎮めるか悩んでいた。
(あまりにも緊張していたら、足下を見られてしまう…)
ハヨンはそのようなことが起きないようにと様々な場面を想像して、どのように対処するのか考えてきたが、やはりそんなものでは緊張はおさまらないのだ。
「誰だって初めては必ず経験します。それがあなたの場合早かっただけです。それにあなたは十分この仕事を担える能力があるので心配いりませんよ。」
ハヨンの青い顔を見たからか、リョンヤンがそういいながら笑いかけた。
「はい。」
「では行きましょう。昼食が終わったら交代ですので、忘れないでくださいね。」
一人はハヨンと共にリョンヤンについて行き、他の警備を任されていたもう一人の隊員にリョンヤンは声をかける。
「はい」
そして彼はハヨンとすれ違い様に肩に手を置き、
「頑張れよ。お前ならやれる。」
と声をかけた。
「はいっ。ありがとうございます」
いつもは無愛想な先輩だったが、心優しい面をちらほらと見せてくれる時がある。ハヨンはそれがとてもうれしいのだ。
(今日は何としても成功しなきゃな)
ハヨンはリョンヤンと共に王子を迎えるために城の門へと出向くのだった。