第20章 幸となるか不幸となるか
あれからハヨンとリョンの関係についての噂が広まっていったのと、アンビョがハヨンと言う者は女性ではないなどといった噂を吹聴して回ったせいか、言い寄る貴族はもうアンビョ以降はいなかった。
ハヨンは多少妙な噂が流れても、貴族に言い寄られなくなるならいいことだと内心胸を撫で下ろしていた。
「それにしてもアンビョは自分をこけにされたと思っているのかな。どうもあんたをおとしめたいらしい。」
二人きりの朝に、リョンは呆れ顔でそう言った。
「みるからに自尊心が異常に高そうだからね。でもまぁ、もともと城の人にはそう思われていたから、大した反響は無いけどね。」
せいぜい関わりの薄かった貴族達ぐらいだ。他の者はもう知っているという反応らしい。
へウォンに至っては
「そうでしょうなぁ!彼女はいつか大物になりますから、ただの女性ではないですよ。彼女は素晴らしい女性ですなぁ!」
と大笑いしたらしい。何を今さらいっているのか、と。
(ちょっとその場所にいたかったなぁ)
とアンビョがどんな反応をしたのか気になったハヨンは少し意地の悪いことを考えていた。
「なかなか懲りないやつだ。まだまだ若いな。自分がもうすぐ後を継ぐことの自覚が足りていない。」
そうアンビョを評価したリョンを見てハヨンは思わず笑いをこぼした。リョンの方がアンビョよりもはるかに年下だからだ。
「あんた今俺の方が年下だって思っただろ」
少し不機嫌そうに眉を寄せたリョンは、隣に座っていたハヨンに目をむけた。
「俺は自分の立場はわきまえているし、いずれどんなことが起きても受け止める覚悟ができている。だからこれくらい言わせろよ。」
さんざん俺の友達をこけにしたやつだからな。少しは文句を言いたくなる。
と付け加えたリョンはいつの間にかそっぽを向いていた。