第19章 まがいものの関係
「あの、そんなことしていただかなくても結構です!私はこの仕事に誇りを持っています。ですのでお気遣いなく!」
ハヨンはこの訳のわからない男に堪忍袋の緒が切れた。野蛮な仕事と言われたのも悔しかった。それに勝手に自分の定規で相手の気持ちを推し量って、自分勝手な愛を押し付けてくることに我慢ができなかったのだ。
「これ以上強引になさったら私も手荒な方法をとる他ありません。」
ハヨンは掴まれた手を捻って逆に彼の手を掴みかえす。
「私に投げ飛ばされても文句は言えませんよ」
ハヨンは今までにないほどの険しい顔を見せていた。
「あなたは私の言葉を何一つ受け入れてくれない…。」
アンビョは怒りで肩を震わせた。
(それは私だって言いたい。)
もう一触即発と言ったところである人物が現れた。
「おい、そこで何をしている。」
ハヨンがその声の主を確かめようと振り返るとリョンヘが立っていた。どうやら執務中らしい。王族の城で過ごすときのゆったりとした服を身に付けていた。
「こ、これはリョンヘ様。私はただ彼女とこうして話をしていたのですよ。」
ハヨンはアンビョが話始めたのをよそにリョンヘを凝視してしまう。彼に王子としての姿で直接関わることが少ないので、これからどうすればよいのだろうと少し混乱していたのだ。
「話?話にしては穏やかでないようだが…。」
リョンヘはハヨンとアンビョがつかんでいる腕に目を向ける。今にでも組手が始まりそうな格好だ。
「私は彼女にこの仕事は向いていないので辞めるよう説得していたのです。女性には危ないですから」
これ以上黙っていては彼の良いように話を持っていかれそうな気がしたのでハヨンは口を挟むことにした。