第19章 まがいものの関係
「アンビョ様。どうかお手を離してはいただけませんか。」
ハヨンは普段より声を低める。彼は少し怖じ気づいたようで手に込める力を緩めた。その時に少し乱暴に手を振り払う。
貴族でもそこそこ地位のある男なので、ハヨンの反応によっては出世の道を断たれる可能性がある。ハヨンはいかにして彼のかんにさわらず対処できるか頭を悩ませた。
とりあえずアンビョもハヨンが不機嫌なのはわかったらしい。君は堅い貝のようだね。決して私に心を開いてくれないだのと呟くのを聞いて、ハヨンは鳥肌がたつのを感じた。
「何で君はここにいるんだい?王に謁見ですか?それとも誰かこの城にいる貴族と恋仲とか?」
ハヨンは腰に携えていた剣を彼に見えやすいように提げ直す。
「私はここで働く兵士の一人です。僭越ながらリョンヤン様にお仕えしております、白虎のハヨンと申します。ですので私が城にいる時は執務中ですので、私的なことでのお声かけは控えていただけませんか。」
アンビョはハヨンの剣を見てたじろぐ。どうやら本当にただのお転婆な娘だと思っていたらしい。
「…それはあなたの本望ですか?」
「は?」
しばらくしてそう言われてハヨンは目が点になった。ハヨンには彼の言いたいことがわからない。
「あなたも腕が立つので無理矢理このような仕事をなさっているのでしょう?女性にしては野蛮な仕事です。一刻も早く止めた方がよろしいですよ。」
王に抗議しなければ、と言い出してハヨンは慌てて彼を引き止める。
「ちょ、ちょっと待ってください!私は自分の意思で…!」
「そう誰かに言えと言われているのでしょう?ならば一緒に行きましょう。」
ハヨンはぐいぐいと引っ張られることとなったのだった