第19章 まがいものの関係
滓の国の第二王子の訪問の前に、ハヨンとリョンヤンは宴会の手配や役人からの滓についての近況報告を聞いたりと様々なことに追われていた。
「どうだ、最近。」
「めちゃくちゃ忙しい。でも楽しいよ。」
珍しくハヨンが少し寝坊して彼女の目元に隈が出来ていることに気がついたリョンがそう尋ねると元気な返事が返ってきた。
精神的なものでは特に追い詰められているわけでも無いようなので、リョンはハヨンに体調管理について言及しないことにした。
「そう言えばね、だいぶ噂が広まってるみたいでねリョンヤン様に質問されたよ」
「それはまずいな。ばれなかったか?」
「うん。大丈夫。」
最近ハヨンは稽古をしながらリョンと話すという方法を辞めて、少し稽古をしてからリョンに会うようにしているらしい。リョンのもとを訪れるときには既に汗が流れていたり、息があがっていたりする。
リョンもハヨンと過ごすのは心地がいいので嬉しいのだが、時おり自分がハヨンの邪魔をしてはいないかと心配になっていた。
「あ、そう言えばね。最近私のことを探してる貴族がいるらしいの。残念ながら叔父様の家をずっと訪ねていて、私が城にいることに気づいてないみたいだけど」
「なんか手を打った方がいいかもな。そう言えばあんた貴族を避難させる前に普通に暗殺者とやりあってたけど、それでも気づかなかったのか?」
並みの人間ではない動きだったので、普通はただ者ではないのはわかるはずだ。
「うん。チュ家がもともと武人が多いからその影響でちょっと勇ましいお嬢さんと思ってるらしいよ。」
「…ちょっと勇ましいねぇ。」
リョンの反応にハヨンは楽しそうに笑った。彼女は女扱いをすると照れるくせに、そういった強いなどという言葉には素直に喜ぶ。リョンは心の中で彼女らしい、と呟いた。