第19章 まがいものの関係
「ハヨン、あなたに恋人が出来たと聞いたのですが本当ですか?」
執務中ハヨンは突然リョンヤンにそう言われて思わず体をこわばらせた。
(リョンとばれたらだめだ。)
その上偽りの関係なのだから本人の親族、その上王族ということもありぼろを出してはいけない。
「はい、そうなんです。」
あまり長々と話しても怪しまれると思い、ハヨンは簡潔に答えることにする。
「驚きました。失礼ですがまさかあなたが恋愛に興味があっただなんて。私はてっきり仕事一筋なのかと思っていました。」
ハヨンは肩身の狭い思いがした。本当はリョンヤンの思っていることが本当だからだ。
「ま、まぁ。本当はそうなのですが、その考えを変えてしまうほど彼を好いてしまったので…」
ハヨンは自分が演技のためと思って言った言葉がかえって恥ずかしい思いを増幅させていることに気がつく。
なんだかリョンヤンの前から消えてしまいたくなった。
「今そういった嬉しい話が少ないので、すごく嬉しいです。おめでとうございます。お幸せに。」
そうリョンヤンに言われてハヨンは思わず固まった。彼は心から祝福しているのだ。
(申し訳ありません、リョンヤン様)
ハヨンは罪悪感で一杯だった。人の好意を無下にしているのだから当たり前だ。
「ありがとうございます。」
ハヨンとリョンはこれから前よりも嘘の関係とはいえ、関り合いは深くなる。そうなれば自然とリョンに手を貸すことが多くなり、だんだんリョンヤンに秘密のことが増えて行くのだ。
ハヨンはリョンヤンにたくさんの恩がある。その人に秘密が多くなることは少し辛かった。
(でもこれは私が決めたこと。少しでも後ろめたく思うなら、いっそのこと全部決めたことはやりとおさなきゃ。)
ハヨンはリョンヤンと言葉を交わしながらそう心に決めたのだった。