第19章 まがいものの関係
「まぁまぁ、恋人がこうして仲睦まじく待ち合わせたりしているんだったら俺も邪魔しないほうがいいな。」
お幸せに!と、とんでもない勘違いをしたまま先輩の隊員は立ち去った。
「…はぁ。」
ハヨンは思わずため息をつく。これで兵士の間に噂が広まれば、なんとなく仕事がしづらいからだ。
「ごめんごめん。正体ばれないうちにあの人を追い払いたかったから。なんせ彼は俺の顔もよく知っているからね。」
彼はリョンのいとこを専属護衛しているので、確かに顔をあわせる機会も多いだろう。声でばれなかったのも奇跡なのか、彼が鈍いのか。
「…これから隊の中でどんな顔して過ごそう…。この前もそうやって誤解されたしもうどうやって否定すればいいかわからないや。」
ハヨンの嘆くような口調に、リョンはさすがに申し訳なく思ったらしい。何度もごめんよ、と声をかけ、何をすれば許してくれるかなどと言い始めた。
「またあんたの母さんに会えるように休日を与えるよう父上を説得するから。」
「…それはリョンへ様としての行動でしょ。リョンのときはリョンとして謝って欲しい。」
珍しくハヨンは拗ねてしまったが、ハヨン自身どうして自分が拗ねているのかわからなかった。
(…なんで追い払いたかったって言葉を気にしてるんだろう。)
先程からハヨンはその言葉を無意識に思い出しては心が痛んだ。
「ごめんって。…じゃあリョンとしてだったら俺はこれぐらいしか出来ることが無いけど…。」
リョンは咳払いをする。
「今から一曲披露するよ。」
リョンは竪琴を掻き鳴らしながら静かに歌う。
(王家の神話の歌だ…)
遥か昔、王の先祖が神から獣を操る力を与えられた時の歌。
人々の苦しみや悲しみもその中で歌われるので、少し切ない気持ちになった。