第19章 まがいものの関係
「おーい、ハヨン。こんなところにいたのか。もうすぐ朝礼の時間だぞ。ってあれ?この人は…」
近くを通りすがった二つ年上の隊員が声をかけてきたので慌ててリョンは笠を深く被った。
「あ、彼はここで芸人として働いてるリョンです。最近よく会うから仲良くなったんですよ。」
ハヨンは怪しまれないようにとそうリョンを紹介した。ここでどもってしまえば何か隠し事があることがまるわかりだし、相手に先に正体をさらけ出した方が不信感が払拭されるからだ。
「おはようございます。ぜひとも私の演奏をご贔屓にしていただけると嬉しいです。」
リョンもそう爽やかに笑って見せるが、相手に見えているのは口もとだけなので抜かりがない。
「へぇー…。そんなこと言ってハヨンの恋人なんじゃないか?もう声からして色男っぽいもんな。」
(どうしてどいつもこいつも私とリョンが一緒にいると恋人に見えるのかしら。)
ハヨンは少しうんざりだった。
白虎、というより兵士はハヨン以外男なのでそういった手のものの話題があまり無く、若い兵士達は何か少しでも異性と関わりができるとこぞってそう茶化しだす。
(なんだろう、男女の仲をからかいたくなるお年頃だったりするのかな)
いつも仕事においては尊敬しているものの、ハヨンの心の中では今、兵士と幼い男の子が同じ立場になっていた。
「あのですね、先輩。私、そんな恋愛してる暇ありません。」
「あぁあぁ、わかっているとも。そんな中でもしたくなるのが恋ってもんだよなぁ。いやぁ若い若い。」
一人頷いているが、ハヨンの言葉は一切聞いていない。その上自分のことを棚に上げて若いだのと言っているのでハヨンはため息をつきたくなるのだった。