第19章 まがいものの関係
「え?あぁ、この前の恰好、良かったと思うよ。普通に貴族の娘だって言われても何の遜色もいらない立ちふるまいだったし、あんたの叔父を通してあんたに縁談を申し込んだ貴族も何人かいたそうだし」
「ええっ!?」
久しぶりに朝にリョンに会ったハヨンは昨日のことを告げるとそう返されたので心底驚いた。
(叔父様にそんな話聞いてないんだけど…。)
「あれ。その様子じゃあ何も聞いてなかったのか?まぁ、あんたが今仕事で忙しいのはわかりきっているし、あの人も当たり障りの無い言葉で断ったんだろう。」
リョンはそう言いながら地面に座り込んだ。どうやらここに長いこと居座るつもりのようだった。
「でもその貴族と顔を会わせたときに居心地悪いから、叔父様も教えてくださればいいのに。」
ハヨンはいつか兵士の格好でその貴族たちと遭遇する場面を想像して身震いした。彼らに何と言われるかわかったものではない。
「大丈夫だって。なんかあったときは俺が何となく話を無かったことにしておくから。」
「それはすごく助かるけど、いいの?」
ハヨンは思わず食いついてしまったが、よくよく考えると王族の権力をつかわせることに気がついて慌てる。
「あ、でもやっぱり私…。自分で何とかするよ。」
「そっか。でも何かあったら言うんだぞ。」
「うん。ありがとう」
ハヨンはそしてずっと聞きたかった話題を挙げることにする。
「そう言えば町のことはどうなったの?」
するとリョンは顔を曇らせる。
「…。あの町の人身売買は徹底的に取り締まりされた。けど、その他に滓の動きが不穏だということでそちらが優先される羽目になった…。」
ハヨンはリョンの苦しげな表情を見て、何と声をかければいいのかわからなくなった。