第19章 まがいものの関係
「今回の第二王子の訪問はあくまでも親交を深めるのが目的ですが、後にはこの国の運命に大きく関わるかもしれません。ですから絶対に失敗する訳にはいかないのです。」
「はい、承知しております。」
ハヨンはこんな外交の時にまで警護をさせてもらえるようになったとは、ずいぶんと信用を置かれたんだな、と他人事のように考える。
本当はもっと長い間リョンヤンの私的な警護を任されるだろうと検討をつけていたのだ。
「今回も私は一貴族、もしくは女官の一人として紛れ込めばいいのですか?」
「いいえ。今回は私の専属護衛の一人として付いていてください。」
ハヨンはそのリョンヤンの答えに酷く驚いた。
(私はまだまだ未熟者だ。自分の腕に自信があるからこそこの職に就こうと試験に挑んだ訳だけど、まだ内々での貴族同士での会合での会議とか、この国での公のことにさえあまり任されたことが無い。それなのに他国の王子がいるなれない空気の中で正しく物事を見極められるだろうか)
ハヨンは早すぎる昇進故に自分の経験の浅さに不安があるのだ。
そんな彼女の表情を見てとったのか、リョンヤンは笑顔で話を続ける。
「そんな顔しないでください。ハヨンは優秀な兵士ですし、礼儀もかなっています。ですからあなたが不安に思うことはありませんよ」
さすがハヨンを見込んで雇った主だからだろうか。ハヨンの考えていることもお見通しだ。
「でも、ハヨンの貴族や女官としての礼装姿が見れないのは少し残念ですね。」
この前の恰好、すごく似合っていたのに。
付け加えられてハヨンはなんだかどこかへ隠れてしまいたいような気分になった。
(なんでいつものように褒められるより恥ずかしいんだろう)
ハヨンは不思議でしょうがなかった。