第19章 まがいものの関係
「おかえりなさい、ハヨン。休暇は充実していましたか?」
ハヨンは久しぶりに訪れたリョンヤンの執務室で、彼にそう声をかけられる。
「はい。王様のお陰で楽しい時間を過ごせました。」
ハヨンが思わず笑顔で答えると、リョンヤンもつられて微笑んだ。その時彼の手元を見ると、何やら執務に関する書を読んでいたようだ。その上、紙も型等がついていないので、つい最近手渡されたもののように見える。
「何か新しいお仕事ですか?」
「あ、あぁ。はい、そうなんです。せっかくお休みを終えたばかりなのに、ハヨンにも関わる仕事のようです。それでも構いませんか?」
「はい。私はいつもリョンヤン様の望むことならばなんでもいたしますよ。」
リョンヤンが手招きをしたので、卓に近づく。そして見せられた書には隣の国の第二王子の接待について書かれていた。
この国は燐の国と昔から交流があり、お互い国交を絶たれては国を存続できないほど影響のある国だ。主には商業での繋がりが厚く、国の利益の三分の一は隣の国との商売での利益だ。
どうやら隣の国は武器の生産にも長けており、燐の国としては同盟を結んで、武器の調達を確かにしたいらしい。
(そう言えばこの国は獣の力に頼ることが多いから、武器も近距離の物ばかり発達している。ただ、今の王はあんまり獣を使うことに抵抗があるから、長距離の武器を手に入れたいのね。)
今回交渉する隣の国は滓という国で、燐の東に位置する国だ。しかしその反対の西側の国、睦と燐は関係が悪くいつ戦いが起きてもおかしくない状態だ。
この第二王子の接待の結果によってはこの国の運命が大きく変わるということがハヨンでも理解できた。