第18章 里帰り
「それにしても良かった。引っ越してなかったんですね。手紙送っても返ってこなかったから、てっきりどこかに移り住んだのかと思ってました」
「悪いなぁ。ずっと忙しくて返せなかったんだ。最近町も物騒になって、怪我人やら流行病が蔓延したりとか医者の休む暇がない」
医師になると大抵は王室や貴族のおつき等になって、裕福な生活を送る者も多いのだが、ヒョンテはそういったものに興味は無いらしい。安い値段で丁寧な診察を行うので町の人々からの信頼も厚かった。
さっきまで往診に行っていたからもう少し時間がずれていたら会えなかったな、とヒョンテはそう言いながら腰をおろす。
ハヨンもならって昔指定席になっていた椅子に座る
「それで、どうだ。リョンヤン様の護衛は。」
「覚えていてくださったんですか。」
ハヨンはヒョンテが以前送った手紙での内容をちゃんと覚えていたので驚いた。
「なんだ、俺がまるで適当に読んだかのような言い方だな。」
「だって医術以外ではずぼらじゃあないですか。」
なんだと?と笑いを含んだ声で言われたので、ハヨンのことは怒っていないようだ。
「お前の手紙だからかちゃんと読んでるんだよ。なんでったって俺の助手だからな」
「元、ですけどね」
その時ハヨンはヒョンテの机に目がいき、そこには一部だけ整頓されたところを見つける。その箇所にはハヨンの送った手紙らしきものが置かれていた。
「なんで笑ってるんだ?」
「いえ、ちょっと嬉しかっただけです。」
ハヨンがそう答えるとヒョンテは不思議そうな顔をした。