第18章 里帰り
「ありがとね、ハヨン。手伝ってくれるなんて。せっかくの休みなんだからゆっくりすればいいのに」
「いいのいいの。いつも母さんの手伝い出来ないからね。」
結局ヨウと夜を明かしたあと、ハヨンはチャンヒの畑仕事を手伝っている。
一緒に住んでいるときも鍛練のことばかりで、ほとんど手伝ったことがない。父を幼い頃に亡くしたハヨンを女で一つで育て、さらに家計を支えるべく仕事をしていたチャンヒには頭が上がらない。
ハヨンも医者の手伝いをしていたので、少しは金を稼いでいたものの、ほとんど家のことは母に任せっきりだった。
ハヨンは鍬を振り上げて畑を鋤いていく。できるだけ自分が力仕事をやろうとしたが、思ったよりも鍬は重かった
(あんな細腕でこれを持っていたのか…。)
父が生きていて、鍛冶屋を営んでいたとき、母は肌が透けるように白く、綺麗だった。父からも昔はすごくもてたんだよ。と聞かされていた。
しかし今は日にやけた顔を土埃で汚しながら、まめのたくさんできた手で鍬を使ったりしている。
(いつか母さんを楽にしたい…)
父の妹、つまり自分の叔母がハヨンを訪ねて来たとき、貴族の生活を母は望んでいないと同居を断った。確かに安定した生活を遅れるが、父以外に繋がりのない人間と同居するのは息が詰まる。ハヨンは、自分の力で住まいを買い、母に親孝行しようと心に決めた。
「あら、やっぱりハヨンがいると仕事が速く終わるわねぇ。」
暫くしてすっかり整えられた畑を見て、嬉しそうにチャンヒが笑った。
「他にすることはない?」
「そうねぇ。もうすぐ春先でしょう?だからこの種を蒔きたいの。」
ハヨンはチャンヒの隣に座って黙々と種を蒔き始めた。