第18章 里帰り
「おかえりなさい、ハヨン!」
馬車のやって来る音が聞こえたのか、母のチャンヒが家から出てきて出迎える。
「ただいま、母さん。元気にしてた?」
「ええ。ハヨンも元気そうで安心したわ。手紙では仕事のことばかりだから、あなたの顔を見てほっとしたわ」
といいながらハヨンを抱き締めるので、ハヨンはチャンヒに寂しい思いをさせていないか少し心が痛む。
「ヨウさんもハヨンを迎えに行ってくれてありがとうございました。」
「いやいや、俺もはやく会いたかったからな。礼には及ばんよ。」
ヨウは快活な男だが、チャンヒよりもゆうに二十以上年上だ。もう老人と言われる歳にさしかかっているのだが、そんなことは欠片も見せない。
ハヨンは今でもヨウと戦っても、勝てることは滅多にない。
「もう夕食の時間には随分遅れてしまっているけど、ハヨンは長旅でお腹空いてるでしょ?軽食を作っておいたから、食べましょう。ヨウさんもご一緒にどうですか?」
「それはそれは。このあと帰っても飯を作るのが面倒に思っていたから、助かる。ではお呼ばれしようかな。」
以前は当たり前だった光景。ハヨンは不覚にもあまりにも懐かしくて泣きそうになった。
ここで泣いても二人に心配される、と我慢する辺り甘え下手である。
「二人にはたくさん話したいことがあるからね。この休暇中は寝る暇も無いぐらい話し明かすよ。」
ハヨンが笑顔で言うと、それは楽しそうだと二人が声をあげて笑った。