第18章 里帰り
「そんなこと…!そんなの絶対にない。私はそう思っててくれて嬉しいよ。だからこの先何かがあっても生き延びようと思うもの。」
あの宴会での暗殺者と対峙した時は、さすがに自分が死に近づいていることを改めて思い知らされたが、母やヨウのためにも生きたいと思ったのも事実だ。
(命をかけて主人を守ることが役目だって言う人もいるかもしれない。私はでも大切な人を悲しませたくないし、あの方の傍で仕えたいっていう気持ちもある。なら、二つとも大事にしようと思うのは変なのだろうか。)
「ヨウさん、ヨウさんは大切にしたいものがたくさんあったら、それをどうやって守り抜く?」
ハヨンの頭には、母やヨウ、リョンヤンにリョンヘ、たけでなく兵士の仲間や町の人々の顔が思い浮かんだ。
「…それはもちろん全部守り抜くさ。そいつらをどれだけ大切にしているか、本人や周りのやつにも伝えてな。だから何かあっても自分が信じている者が手を差しのべてくれる。それで全部を守っていくんだよ。」
(リョンヤン様がリョンを守ってくれと私に頼んだのは、リョンと仲が良いのとも、私の腕を見込んでというわけだけでは無いのかもしれない。)
ヨウの言葉を聞いてハヨンは思い当たる者があった。
「あと大切な者に順序をつけたり、全部守ることを諦めてはいけないと思うな。そんなことをしたら失ったときにやっと自分がなんて愚かなことをしたのかと後悔することになる。」
(そう言えばリョンヤン様にリョンヘ様を守ってくれと頼まれた時、どちらを優先すればって少し悩んだな。)
結局はどちらも守るという結論に至ったが、どちらの人が自分は大事か優先順位をつけるような行為だったので、自分はまだまだ未熟者だと思い知る。
(ヨウさんのように考えられるようになりたいな)
一応元弟子のような関係だが、今でもこの恩師には教えてもらうことがたくさんあるのだった。