第17章 褒美
そして小さな鍵穴。
(地下か…!)
鍵なんて探している余裕は無い。
(練習では割る専用の板を使っていたけど、何回か当てればいけるかな。)
ハヨンは蹴りを入れ始める。一点目掛けて蹴る。ということを幾度か繰り返すと、割れ目が入った。
(これで上に飛び乗ったら割れて落っこちて打つ…なんてことにはならないようにしないと。)
ハヨンは次は拳で殴り付けるとやっと割れた。拳から流れる血のことなど気に止めている場合ではない。
ハヨンは地下へ続く階段を下りる。
そこには縄で自由を奪われた人達が座り込んでいた。入ってきたハヨンが仲間の一人ではないかという怯えの色が瞳から見てとれた。
「私は彼らの一味ではない。あなた達を助けに来ました。私が縄を解いたらばれないようにそっとこの店を抜け出してください。」
ハヨンは小刀を懐から取り出して次々に縄を解いていく。
「おねぇさんありがとう。」
小さな子供の縄を解いた時、そう言われてなんだか泣きそうになる。この少女は大人達の汚い欲望に巻き込まれただけなのだ。何も悪いことをしていない。それなのにこんなに傷を負うなんて…とハヨンは溢れそうになる何かを耐えるためにぎゅっと唇を噛み締めた後、笑った。
(この世界を変えたい。私にはたいした力はないけど、こんな小さな子供が笑って過ごせるような世界にしたい。)
城の中が派閥で争っている場合ではない、とハヨンは怒りが沸き起こる。
(私の主はリョンヤン様だ。リョンヤン様は中立派。でも私はもう傍観しておくのは耐えられない…)
今までは確かに平民を大事にしてほしいとは思っていたが、派閥に巻き込まれるのが嫌で、自分の考えをひた隠しにしていた。でも、そんなことをしていたら平民の暮らしをしていた自分が伝えられることもあるはずなのに平民達の声はいつまでも届かない。
(この国を、子供達を守るにはどうすればいいだろう。)
ハヨンは次々と縄を解きながら自分の意志と主の立場との二つで揺れ動いていた。