第17章 褒美
「なら、絶対正体だけはばらさないってことだけ気をつけてやろう。」
ハヨンの言葉にリョンは頷く。
ハヨンが辺りを見渡すと、誰が落としたのかわからないが、笠が落ちていた。
拾い上げて土ぼこりを落としてみると、割りと新しいようだ。
ハヨンが被ると、
「いいねぇ、謎の二人組って訳だな。」
とリョンが笑う。そして近くにあった店で被りものがついた外套を購入した。
「私は店に入ったらまず、売られている人達を助けに行く。リョンはあの酒場で一暴れして、みんなをひきつけといてくれない?」
「わかった。それって派手にやってもいいんだな?」
「誰も危険に巻き込まれなければね。」
間違えて罪の無い人まで巻き込むのは一番してはならないことだとハヨンは思っていた。
「じゃあ三つ数えたら飛び出して。三、二、一」
ハヨン達は物陰から飛び出し、店に走り込んだ。
勢いよく入ってきた二人を見て店にいた者はざわめいた。
「なんだなんだお前ら。城の回し者か?」
「いいや、違うね。ただの通りすがりの正義の味方だよ!」
リョンはそう叫んでがらがら声の男に飛びかかった。
「おい、お前らやっちまえ!」
がらがら声の男は店のすみに立っていた体格のよい二人組に声をかけた。どうやらこの店の用心棒らしい。どこか異国の血が混じっているのか、燐の国の者とは全く違う骨格だ。
「何人でも相手してやろうじゃないか。」
(…リョンって戦いの時性格が変わるんだろうか。いつもに増してのりのりな気がする。)
ハヨンは少しあきれながら笠を深く被り直し、人の目につかないようにこっそり店の奥に入っていく。
しかし店の奥には部屋はいくつかあったものの、どこにも人がいなかった。
(変だな。いったいどこから…。)
廊下を見渡すと床の木目が、異なっている場所を見つけた。