第17章 褒美
しばらく大通りばかり歩いていたが、勇気を出して裏路地に入ることにした。
ハヨンは歩いていると時々麻薬の中毒者と思われる人達に足を掴まれたりしたが、心の中で謝りながら少し乱暴に振りほどいた。
呂律が回らず、足もしっかり立っていないので、這ってくるのに脚に爪が食い込むほど掴んでくるのだ。
しばらく裏路地を歩けば人が店から溢れるほど入っている居酒屋らしきものがあった。
「何か怪しい店だ。少し覗いてもいいか。」
声を抑えているリョンの問いに頷き、少し身構えながら静かに店に入る。
「こいつは読み書きもできるし頭もそんなに悪くねぇ。それにこの器量だ。将来に期待できるぞぉ。誰か買う奴はいねぇか!」
ガラガラとした声の男が、小さな少女を舞台のようなところに引っ張りあげて叫ぶ。
「俺は三千リン!」
「いいや、五千リンだ。」
「俺はじゃあ一万だす!」
酒を飲みながらそう競っていく者達。少女は恐怖で怯えていた。
(こんな幼い子まで…)
ハヨンは沸き起こる衝動を奥歯をくいしばって耐えた。
(今、飛び出してもリョンに迷惑をかける。それにリョンをかばいながらそれと人質になりうる売られる子達をかばいながらこの人数と戦えるだろうか。危険が大きすぎる。耐えろ私。耐えなきゃ駄目だ。)
「じゃあ一万リンでお買い上げだ!」
がらがら声の男はそう高らかに言って、一万リン出した男に少女を引き渡した。
そのとき彼女とハヨンの目が合う。
彼女の目には涙が溜まっていた。
「リョン。ちょっと外に出てくれない?」
ハヨンは低い声でリョンの腕を掴む。
「ここで一暴れするか?」
居酒屋から少し離れたときリョンがそう言った。
「うん。だからリョンは危険だから先に帰って。」
「それは聞き捨てならないなぁ。俺も参加する。あんなのやっぱり目の当たりにすると見過ごせない。」
「で、でも。リョンは」
「大丈夫だ!俺は王族一剣の扱いが上手いんだ。」
にやっと笑っているリョンの上着の下に、立派な剣が携えてあった。