第17章 褒美
町を覗いてみると、王都からは離れた場所にも関わらず、王都並みに栄えている様子だった。
海にも近いようなので、外国との貿易が栄えているのかもしれない。少し異国風の食べ物や、小物なども売っていた。
「お嬢さん、この薬はいらないかい?隣の国から輸入した物でね、絶世の美人になれる薬だよ」
道すがら、老婆にひきとめられる。
「いえ、結構です。」
老婆とは信じがたいほどの力で腕を捕まれたが、ハヨンは払いのけてさっさと歩き出す。町を見渡すと、細い路地などに、うずくまっている人がちらほらといた。
(病的な痩せかた…麻薬か。)
隣を歩いていたリョンも察したらしい。思った以上に悪い状態に顔をしかめていた。
「まずいな。ハヨン、何があっても離れないようにしないとこの町は危険だ。」
ハヨンも強く頷いた。
ハヨンは城から支給されたり、それなりの報酬があるので、町の人とも少し服装も質が良いものが多い。それにリョンも芸人に扮しているとはいえ、持ち物の端々からただ者ならぬ雰囲気は出ている。
裏で宝物を売買するもの等は目が肥えているから、すぐに裕福な者だと目星をつけて、下手をすれば追い剥ぎをされるかもしれない。
「でも何かあって、はぐれることになったら私を置いてすぐにこの町を出てね。」
「何で。あんたをほおっておけないだろ」
「だって、もしうろちょろして狙われたらどうするの。大勢で囲まれたら終わりでしょう?」
「それはあんたも同じだろ。」
「いいえ、私にはリョンやリョンの家族を守るのが仕事です。だからリョンには傷を負わずにこの町を出て欲しい。できれば今すぐここを出たいけど…」
「いや、悪いけどみんなのために人身売買の現場だけはどこかを把握したい。だけど、あんたもはぐれたらすぐに町を出る。それだけは約束してくれたら俺もそうする。」
「わかりました。」
ハヨンはしぶしぶ頷いた。