第17章 褒美
「でも、今はそんなことを言っている場合ではない。みんな必死に生きているし、リョンとしての楽しい時間を今まで与えてくれた。城からみんなを満足させられるような食料を持ってくるのは無理だけど、せめて歌で元気になってもらおうと思ってる。」
確かに城から食料をもってこれば、何人かは一時的に満足するだろう。でもそれでもほんの少しの足にしかならないし、むしろ食料を与えられた人を羨んで争いが起こることもある。
だから全員の食料を補給できない限り、中途半端な支援はやめた方がよいのだ。
とリョンは淡々と語った。
「もしそれで少数の人が満足して、ああ、俺いいことしたなぁって思ったらそれはただの自己満足だろう?もっと食料が必要な人はもっといるから、それを考えると安易に行動できないんだ」
「それもそうだね。」
ハヨンも昔母が病に臥せったとき、どうして王は支援してくださらないのだろう。苦しい生活を強いるのだろう。と少し恨めしく思ったことがあるが、それはまた城で一つ行動を起こすのにとてつもなく時間がかかるからだと働き始めて少しわかった。
「俺の一声で、城のやつらが支援してくれる気になるんだったら議題にあげれるんだけどな…」
今は平民派は苦しい中にいるから発言力がないのだ。
ハヨンはリョンのもどかしそうな顔に、いてもたってもいられなくなった。
「リョン。私ができることは少ないかもしれない。でも、なにか私にできることがあったら遠慮なく言ってね。私、リョンの力になりたい。」
「あんたはそう言うけど本当はリョンヤンの専属護衛だろ?俺に関わって大丈夫なのか。」
酷く驚いた顔をしていたが、その言葉の端々には誰かにすがりたいような思いが隠れていた。
「大丈夫。私はリョンの友達でしょう?そりゃ主人のことも大事だけど、友達の力にもなりたい。板挟みになったって私はあのかたとリョンの二人とも大事にしたいの。」
ハヨンは強く頷いた。どれほどリョンの力になりたいのか。それが伝わって欲しいと願いをこめて。