第17章 褒美
「人身売買はあの町ではされてないみたいだな。」
リョンは随分と町が遠ざかった後にそう呟いた。
「そうだね。リョンはどこの辺りだと見当つけてたの?」
リョンが暗い表情をしていたので、もしかすると静かになると気まずくなりそうだ、とハヨンは必死に会話を繋いでいく。
「うーんこの辺りには2、3町が点在しているから、それのどれかだとは思うんだけど。それにしてもハヨンはこんなにあちこちと町をまわって大丈夫?」
リョンは一緒に行こうと言っていた癖に、そのことに今気がついたようだった。
「大丈夫、ここから東にずっと進んだとこに家があるんだ。リョンの次に行く町はどっち?」
「俺も東だ。でもそこを見たら次は南だから次の町で別々に行こう。」
「うん。いいよ。」
しんと静まりそうだったのでハヨンは会話を続けるために話題を変えることにした。
「あのユナちゃんって可愛いね。」
「そうだな。まぁ、お高くとまっているそこら辺の貴族の娘とかよりもよっぽど機転がきくし、美人だ。それに何よりいきいきとした顔をする。」
リョンには貴族の娘がそんなふうに見えていたのか、とハヨンは驚いた。
(何だかすごくけなされているな…)
と考えたが、ハヨンも一応は貴族の血をひく娘である。何だか少し複雑な心境なのはどうしてだろうか。
「前にも言っただろう?俺は城でも町でも偽った姿でいる。城はまあ、家臣達はともかく父上や母上は俺を大事にしてくれる。でもな、町では偽りの俺を本当だと信じてくれている。町のみんなと俺は住む環境が全然違う。だから最近は少しだけどリョンでいるのが辛くなってきた…。」
リョンの声は少し疲れを感じ取れた。