第17章 褒美
「みんな!リョンが来たわよ!」
ユナの明るい声が響く。
暗い雰囲気で、静まり返っていた町が、少しざわめき始める。
「リョン?本当か?」
「ええ!さっきそこの通りであったの。」
ユナのその返事で人があちこちと現れた。
「おお、本当だ。リョンじゃないか。元気にしてたか」
「まあ、ぼちぼちかな。おじさんは?」
「うーん、今はこの前の嵐のせいでみんな苦しいな。」
そう言う男の目元はやつれてくまができていた。
「なぁ、兄ちゃん。元気の出る曲弾いてくれよ。」
小さな男の子がリョンの袖を引っ張ってせがむと、リョンは柔らかく笑った。
「いいよ。じゃあとびっきり元気の出る曲を弾いてやろう。」
そう言うとリョンは陽気な音を奏でながら歌い出した。
(初めてリョンの歌っている姿を見たな…)
流石に人気の芸人のふりをしているからか、歌も竪琴も文句なしに上手かった。
リョンの奏でる音にあわせて踊り出す子供や一緒に歌う男がいた。憧れに似た眼差しを向ける若い女性や、そんな彼ら彼女らを見て頬笑む母親や老婆がいた。
(…ああ、リョンの側はなんて心地がいいんだろう)
周りを笑顔にするその力にハヨンは自分も感化されていることを思いしる。
一曲終わると町の人々から拍手が起こった。
「久々に楽しい気持ちになれたよ。ありがとねリョン。」
小さい子供をあやしながら若い母親が少し涙ぐむ。
「力になれたなら光栄だな。」
「兄ちゃんの曲もっと聞きたい!」
「ああ、いくらでも弾くぞ。何がいい。」
そう言いながら町の人々に向ける眼差しはとても優しかった。
(…優しいでは足りないな。慈しむ?いや、愛しく思ってるのかな。)
ハヨンはそんな彼をずっと見ていたいと思ってしまう。
(この人は、この国には欠かせない人になるだろうな)
皆に囲まれる彼を見て、ハヨンは確信したのだった