第17章 褒美
「この前の嵐で農作物がダメになってしまった農家が多くてな…。それで泣く泣く自分の娘を売りに出したり、借金が貯まっているやつが売り飛ばされたりと人身売買が盛んになってきている。それに盗みもな。」
そういえばあれはすごかった、とハヨンはつい最近燐の国を襲った嵐を思い出した。
(あれでかなりの人が亡くなったらしいし…)
ハヨンの故郷は幸い無事だと母からの手紙が届き、ほっとしたがやはりそうでなかった人もたくさんいるのだ。
「それはじゃあ、見回りの兵士を増やした方がいいのかな。それでも限りがあるのはわかってるんだけどね。」
ハヨンとリョンは並んで歩きながら考え始める。
「そうかもしれないな。兵士に見つからないようにする抜け道なんていくらでもある。まぁ、増やさないよりはましだけどな。とりあえず今日は町の様子を見て、どこの辺りの警備を増やすかを確認しようかなと思ってな。」
そのときリョンは被り物を深く被り直す。見ると向こう側から白虎の隊員が近づいていた。
「よお、ハヨン。里帰りの褒美を貰ったらしいな。」
「はい。久々に母に会えるので楽しみです。」
「良かったな。…所で横のやつは誰だ?お前の恋人?」
「ち、違いますよ!冗談はやめてください。ただの友達です。」
(王族と恋人とか…!恐れ多すぎでしょ。)
ハヨンが懸命に否定するので、どうやら照れていると勘違いしたらしい。
「照れるなって。女の兵士ってのはまだ普通とは思われねぇけど、それを理解してくれる懐の広い男に出会えたんだからよ。兄ちゃん、ハヨンを大事にしなよ。」
じゃあな、と笑いながら去っていく隊員をみて、ますます誤解を深められているのがわかったのでハヨンは落ち込んだ。
「ご、ごめんね。リョン。とんでもない勘違いされちゃって…」
隊員が話しかけている間ずっと黙っていたリョンが顔をあげる。何だかふてくされた顔をしていた。