第17章 褒美
次の日ハヨンは朝早くに起きて、朝靄がまだ消えぬうちに城の裏口から出ようとしていた。
夜警をしていた兵士たちが自室に戻り始めていて、ハヨンとたびたびすれ違う。厨房の窓からはもくもくと煙が出ており、もう朝餉(あさげ)の支度をしているのだろう。
いつも中庭で鍛練していたので、城の者が活動していたのを目にしたことがなかったので、ハヨンには珍しい風景に見えた。
「ハヨン、おはよう」
唐突に後ろから声をかけられる。まさか誰かに声をかけてもらえるなんて思っていなかったから、ハヨンは飛び上がりそうになった。
「お、おはよう。」
慌てて返事をすると声をかけた本人、リョンがにやにや笑いながら立っていた。
「俺の挨拶にびっくりしたな?何か考え事でもしてたんだろ。」
「うん、ちょっとね。」
あんたの反応面白かったなー、などといってくるので、ハヨンは少しばつが悪くなった。
「じゃあ私は今から里帰りだから、さよなら。」
ハヨンは照れかくし半分で慌てて踵を返した。
「おいおい、ちょっと待てよ。」
リョンに腕を捕まれる。
「何?」
「一緒に行こう。」
にやっと笑ったリョンは竪琴を持っており、どうやら町に行くようだった。そういえば服装も何だか芸人のような格好をしている。
何だかややこしそうな予感がしてハヨンはため息をついた。
「リョン、いい加減頻繁にお忍びするのはやめたら?」
きっとまた兵士のみんなが慌てるのだろうと考えると不憫でならなかった。
「いやいや。俺は町人の暮らしに憧れる男だからねぇ。無理だよ。それにますます町の様子がおかしくなっているから見に行かないと。」
「…おかしくなってるって?」
ハヨンはリョンの言葉に首をかしげた。