第17章 褒美
そんなハヨンの気持ちは当然誰も知らず、
「今回の件で、お主に何か褒美をやろうと思ってな。何か望むものはあるか。」
と王が優しい笑顔で尋ねた。
(私が望むもの…)
そう尋ねられたら大抵は金や地位、物が一般的だろうが、ハヨンはとっさに母とヨウの顔が浮かんだ。
「…ならば一度里帰りのために休日をいただけませんか。」
普通新兵は一年間は実習以外で城の外に出ることは許されない。買いたいものは月に一度やって来る買い出しをしに行く先輩の兵士に頼むのだ。
「休日か。確かに里帰りをすることも大事だな。てっきり私は報酬をと言われるかと思ったが。ならばお主には五日間の休日を与えよう。」
「いっ、五日もよろしいのですか!」
よくて3日だろうと思っていたハヨンはすっとんきょうな声をだす。そんなにも王族の護衛をする身が休日をとってもよいのだろうか。
「よいよい。里帰りは立派な親孝行だ。それになかなか帰れるものでは無いからなあ。もしかすると当分帰れんかもしれん。」
家族のことを大事にしたいという気持ちをくんでくれた王をお優しい方だ、とハヨンは感動したが、それと同時に最後に付け加えられた言葉に首をひねった。
(まるで戦でもするようなお言葉だな…)
周囲の国とは今のところ何も不穏な動きはない。
ハヨンには王の言葉が不思議でならなかった。