第16章 深まる謎
(確か身寄りもなく貧しい彼を哀れに思って雇ったんだっけ…。そういえばあの貴族は、平民派だったか。)
平民派とは、今干ばつなどで厳しい生活を送っている平民たちにどう対策を施すかを優先して考えている貴族や王族のことだ。ここにはお忍びでよく平民達と関わっているリョンヘも含まれる。
一方対立しているのは王権派で、この貧しい生活により平民が王族や貴族に不満を持たぬよう王の権力を高めようとする一派である。
そしてもう一つは中立派で、ことを荒立てたくない人々のことだ。王や、リョンヤンがこの立場であり、平民派と王権派はより味方を増やそうと躍起になっている。
隠居させられた貴族は特に平民派でも熱心な一人で、リョンヘの強い味方だったらしい。それに財力もあったので、平民派の筆頭とも言えた。
(つまり、今回の件で平民派の発言力は一気に落ちて、リョンヘの賛同者が減るわけか。)
ハヨンは座っていた体勢をそのまま崩し、後ろに倒れる。天井を見つめながらなおも考えていた。
(確かあの貴族の息子は王権派で、親子の仲が悪かったな。)
一度城で立ち聞きした噂話を思い返して少し青ざめる。
(本当にリョンヘが追い詰められている。これは王権派にとって有利な話だ。もしあの従者が操られていたのだとしたら?わざとされたことだったら?それは、王権派が人々を操って、この世を自分の思い通りにしようとしているということだ。)
ハヨンは恐ろしくなって目を閉じる。しかしそんなところで不安が薄れるものではない。ほんの数日前、意を決したようにリョンヘを守ってほしいと頼み込んできたリョンヤンの表情を思い出した。
(何かあれば助けようと思っていたけれど、これはもういつも警戒しなければいけないかもしれない…)
一人で二人を守り通せるだろうか、とハヨンは悩み始めるのだった。