第15章 宴にて交わされるのは杯か思惑か
「それで、彼はなぜ火傷を負っていたのですか?誰も火おこしは持っていなかったでしょう?」
わざわざ火おこしを持ってくる暗殺者もとい従者もどうかと思うが、火傷を負うなんて、そうとでも思いたくなる。
「いえ、それが急に辺りが眩しくなって思わず目を閉じてしまったんです。そのあと目を開けたら彼は火傷を負って意識を失っていました。」
「その光というのは?」
「わかりません。」
またもや三人とも黙りこんだ。
「今回のことは謎が多すぎる。よく不可解な事件が起こるが、一向に謎が解けないんだかなぁ。」
ヘウォンは難しいことは嫌いだ、と頭をかきむしる。
「何か大きなものが裏で動いているとしか思えませんね。」
ハイルは静かに答えた。
ハヨンはふと、光をみたときあまりの眩しさに驚きはしたが、何か懐かしい気持ちがあったことを思い出した。
(なぜだろうあんなに眩しくて怪しいものだったのに…。)
「…四獣のご加護か。」
ヘウォンは暫くの間黙りこんで考えていたが、そう呟く。ハヨンとハイルは突然のことだったので首をかしげた。
「四獣とは、あの朱雀、玄武、白虎、青龍のことですか。」
国の神話として知られている神の友である獣。この国の王を守るために地に降り立ち、そのまま姿をくらました伝説の生き物だと教えられてきた。
「ああ。」
ぶっ、とハイルが吹き出す。
「まさかヘウォンさん、本気であの神話信じてるんですか?」
ハイルが雑居吹き出したのを機に、堰を切ったように笑いだした。
ヘウォンはその反応に不満げな顔を隠しきれていない。