第15章 宴にて交わされるのは杯か思惑か
「それで、宴会での経緯を教えてくれ。」
二人は宴会にいた人の避難誘導、残りの二人はハヨンと取り押さえようとするも気を失った状態だったので、このことをまともに話せる人がハヨンしかいなかった。
今ハヨンは医務室の個室のようなところで、ヘウォンと上司のハイルと3人で膝をつきあわせている状態だった。
「確かペ・サファン様でしたっけ。あの方が陛下に短剣を贈ろうとしていたのですが、そのとき彼の従者がその短刀で陛下に斬りかかろうとしたんです。」
「ふーむ、それは避難させた者からも聞いたんだが、彼は避難する王族には手出ししなかったのか?」
「はい。私が短剣を受け止めていたから私を攻撃したのかなと思っていたのですが…。」
「うーん、奇妙だな。王族に恨みがあったらお前に攻撃する前に避難させていた隊員や王族を狙うと思うんだけどな。」
ハヨンはヘウォン、宴会場での奇妙なことを話してもよいだろうかと躊躇していた。
(正気を失っているって本当と確かめた訳でもないし…。それにいきなり光が…って何のおとぎ話だって感じだし…。)
ハヨンが落ち着き無い様子だったからか、
「何でも話してくださいよ。笑いませんから。すべて大事な情報です。」
とハイルがハヨンの肩を優しく叩く。
「えっと…、相手をしているとき、従者が正気を失っているように思ったんです。何だか目が明後日の方向を向いてて…。それに叫び声も人間の物と思えなかった…。」
ヘウォンはうーん、と腕組みをしていたが、
「それは気が高ぶってそうなったのでは無いのか?」
と尋ねてくる。
「いえ、それにしては私に対して的確に攻撃していましたし、後は暗器が刺さっても動き続けたんです。もはや人間の感覚を失っているかのように。」
薄気味悪くなって、三人は少しの間黙りこんでいた。