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華の剣士 王宮篇

第15章 宴にて交わされるのは杯か思惑か


「逆に聞くけどなんでお前はあの話を信じていないんだ?」



「…なんでって?だってあまりにも現実味が無いじゃないですか。」


ハイルの声は笑いをこらえているのか震えていた。どうやら笑いすぎたらしく涙を拭いていた。もともと温和な印象はあったが、こんなに笑い上戸なのは初めて見たので、ハヨンは印象を改めねば、と考えた。


「現実味が無いだって?じゃあ、陛下達が獣を操っているのはどう思っているんだ?」


「あれは操る技術みたいな物が伝承されているのではないんですか?もしくは獣の習性をわきまえて、何かを使って操るとか。」


(なるほど、そういう考えもできるのか…)


ハヨンは今まで、神話について深く考えたことがなかった。四獣は特に信じているわけでもないが、王族は獣を操る力を持っていると思っている。



(でも、七つくらいのときに動物の生態を知っていて操れる人なんているのかなぁ。)


とハヨンはハイルに異を唱えたかったが、王族の関わることなので秘密にしておこうと黙っておく。



「とりあえずだ!俺は城には王族や城を守るために四獣がどこかに潜んでいると思う。お前は笑うかもしれんが、これでやつが火傷を負うことも説明がつくだろう?」


「…それはまぁ、そうですが。」



なんとも突飛な結論ですね、と苦虫を噛んだような顔をするハイル。


結局三人で話し合ったがその光は王族に害をなすものでないということで一致した。


気がつくと窓からさす光が蜂蜜色に変化し、ハヨンたちの顔を優しく照らしている。



「おっと、そろそろ寄宿舎に戻る時間だな。」


ヘウォンが立ち上がったので、二人もそれにならう。



「よくわからないこともあったが、ただ一つ言えることは、お前達がよくやったと言うことだ。」


部屋の寝台に寝かされている二人の隊員とハヨンを優しく見ながらヘウォンはそう笑う。


「なんせ死人がでなかった上に、俺たちの究極の使命である王族の方達を暗殺者が指一本触れさせられないようにできたからな。」


よくやったとハヨンはヘウォンに頭を勢い良く撫でられ、髪が酷く乱れた。



(父さんが生きていたらこんなことをしてくれただろうか)


ハヨンは十年前にこの世を去った父のことを咄嗟に思い浮かべた。


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