第15章 宴にて交わされるのは杯か思惑か
入ってきた芸人は演奏者は男だったが、舞い手は女ばかりだった。
この前にリョンヤンが狙われたときもそうだったが、暗殺者は、芸人になりすまして来ることも多い。家柄や様々なことを重視する城には、唯一芸人だけが技術しか求められないのだ。
ハヨンも、芸人を注意深く見ろとヘウォンに指示されている。
(短剣を忍ばせて…という作戦は無理だな。あんな細腕なら、精々浅手しか負わせられない。)
彼女達の持ち物を一つ一つ目で確認していく。
(武器になるのはかんざし辺りか。)
どうも彼女たちは暗殺を企てているように見えなかった。貴族の内通者が、王族の誰かが狙われていると報告したのだが、果たして本当かと、他の隊員も思っているようで、四隅に立つ上司達が訝しげな表情をしているのが見てとれた。
(もし芸人に紛れていなかったら…。)
素性が曖昧で、すぐに風景に紛れ込める者。ハヨンは辺りを見渡す。
「今日は陛下にお渡ししたいものがあるのです。」
ある貴族がそうセヒョン王に話を持ちかけていた。ありがたいことに、ハヨンの座る位置は貴族の話していることが大抵聞き取ることができた。
「また、異国の物か?」
どうやら王にはなれたことのようで苦笑いをしている。
「そうなのです。今日はまた、他国の動きが不穏なので、陛下のためを思い、これをもって参りました。ヤクヨン。」
その貴族は後ろに控えていた従者に声をかける。従者は静かに王に近付いた。