第15章 宴にて交わされるのは杯か思惑か
「それにしても。今日初めて見る顔ですね。お嬢さんは一体…。」
来賓の貴族がそう言いながらハヨンに目を向ける。その他の来賓達もハヨンを注視していた。
まあ、それは当たり前と言えば、当たり前なのだが、今まで一度も見たことがない娘が、いきなり王族に近い位置で食事をしているのだ。貴族もよっぽどの有力者と思うに違いない。
「彼女は私の姪のハヨンと言います。今までこういった席に顔を出していなかったもので、みなさんに知っていただこうかと。」
チュ家の現当主で、ハヨンの叔父にあたるイルドが微笑む。彼とは事前に打ち合わせており、余裕綽々といった様子で酒をあおっている。
「なるほど。ところでハヨン殿はおいくつなのかな?」
(きっと私が結婚してもおかしくない年頃だからだわ。これでも私は有力貴族のチュ家の一員だし、力をつけるために政略結婚でも狙っているのかしら。)
と少し苦々しく思いながら箸を置いた。
「今年で十七になります。」
と精一杯微笑んでみる。
貴族の何人かがひそひそと言葉を交わしているのが視界の端に写った。
(あの人たちは放っておいて、私は仕事に戻ろう。)
と辺りをさりげなく見渡す。やはり王族に目を向けると、リョンヤンとリョンヘは第一王位継承者なので、人目につく場所に座っていた。
(うーん。でもやっぱり私を助けてくださった方は、どうしてもリョンヤン様達の親戚の方とも思えないのよね。)
ハヨンには目鼻立ちがあまりにも違うように感じる。
そんなとき、芸人達が座敷に入ってきた。どうやら余興が始まるらしい。